〜小児看護専門看護師ブログ〜クリニックで痛みを伴う処置を行う際の看護③処置後のかかわり
- 2026年5月22日
- 小児看護専門看護師ブログ
こんにちは!小児看護専門看護師の中井です。
今回で私のブログも5回目になりました。はじめは悩みながらも少しでも読んでくださる方のヒントになれば!との思いで自分の思いも含めお話ししてきました。最近こんな私のブログにお便りをいただくこともあり、あぁ、いろんな方が興味をもってくださり、いろんな方に届いているんだなと思うと嬉しく、私の励みにもなっております。
お便りやご感想をいただいた方々、本当にありがとうございます。
さて、今回は「クリニックで痛みを伴う処置を行う際の看護」としてシリーズで3回にわたりお話ししている最終回「処置後のかかわり」についてお話ししていきたいと思います。
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処置のかかわりは「退室」するまで??
お子さんの処置を終えたあと、医療者の方の中にはがっくり肩を落としながら処置室を退室していくお子さんの姿を見て「あぁ、なんて声をかけたらいいのかな?いま声をかけてももう遅いかなぁ、もうちょっと何かできなかったかなぁ」と悩んだことはありませんか?
実は処置が終わり、お子さんが退室し、クリニックから帰っていく時まで、私たちにできることはたくさんあります。むしろ、私はお子さんにとって処置がどんな体験だったにせよ、この退室後のかかわりは非常に大切だと考えています。
では、処置の後に私たちがお子さんにどんなことができるかについて今回はお話しをしていきたいと思います。
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処置を終えたお子さんはどんな気持ち?
処置が終わった後のお子さんの反応を見て、皆さんはお子さんがどんな体験をされたと感じますか?中には「今日はうまくできた!」「イメージ通りできた!」「完璧!」と思って処置を終わることができたお子さんもいらっしゃるかもしれません。そんなときのお子さんの顔は自信に満ち溢れ、お子さん自身で「嫌だけどそれでもがんばれたんだ!」と私たちのサポートを必要とせずとも、肯定的な体験として刻まれていくこともあると思います。しかし、多くのお子さんは「今日こそは・・と思ったのにうまくできなかった・・・」「こんなはずじゃなかった・・・」とがっくり肩を落として終えていませんでしょうか。前回までのブログでお話ししたように、処置の前と処置中のかかわりの中でどれだけ医療者がお子さんの主体性をサポートしてもやはりどこかで痛みを伴う処置を受けることはお子さんにとって受動的で無力感を感じやすく、処置を「された」側の体験として刻まれていくのだと感じます。また、本当に多くのお子さんが「泣く」という自分の行為が失敗と直結しており、「今日こそは泣きたくないと思っていたのに泣いてしまった」「泣いた=頑張れなかった」と感じているように思います。前回のブログでもお伝えしたように、「泣く」という行為は失敗ではなく、むしろお子さんの対処行動でもあり、何よりも痛みを伴う処置に向かうお子さんの姿勢や頑張りを讃えられるべきだと思います。また、今回の処置の体験は今後、お子さんが処置に臨むときに覚悟できるかどうかに大きく影響してきます。そのため、これからのお子さんのためにも「嫌だけど頑張ってよかったな」「そっか、ぼく(わたし)、頑張ることができてたんだ!」とお子さん自身が感じてクリニックから帰っていくことができるかかわりができるとよいかなと思います。
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痛みを伴う処置を受けた後にできる3つのかかわり
①ポストプレパレーション
皆さんは「ポストプレパレーション」という言葉を聞いたことはありますか?このシリーズに第1回目のブログでも説明したように、プレパレーションは処置前の説明による心構え、処置中のストレス緩和、処置終了後のストレス緩和の3点が重要です。ポストプレパレーションとは処置を受けたお子さんが抱く不安や恐怖を緩和し心理的な回復を促すための活動で、お子さん自身が自身の体験を整理し、達成感や肯定感を得られるようにすることが目的とされています。
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「される」側から「する」側へ
さきほども申し上げたように痛みを伴う処置は、お子さんにとってはどうしても「される」体験であり、無力感を感じやすく、自尊心が下がる体験となることがあります。そのため、体験した処置を振り返る中で、「される」側から「する」側になり、少しずつ自身が受けた体験を整理していく機会を持つことが大切と言われています。具体的には遊びの中でお子さん自身が実際に受けた処置を保護者やぬいぐるみを自分に見立てて自身が「する」側となり、自身が受けた処置を振り返ることで処置のイメージを捉えなおすような行為です。これを行うことでお子さんは自身の心のバランスを保っていきます。遊びとは本来お子さんにとって自由で主体的なものですので、医療者の方や保護者が敢えてそのような場面を設定したり準備したりする必要はありません。
そのため、このかかわりは意図的にかかわるというよりは、処置を受けた後、お子さんが主体的にこのような処置を振り返るような遊びを始めることがあるかもしれません。どうぞその時は医療者や保護者の方はその時の思いや行動を否定せずに「そうだったんだね」「そんな気持ちだったんだね」と見守ってみてください。そうすることでお子さんは自身の力で自分の「された」経験を「する」経験として捉えなおし、自身で心を整理していくことができます。痛みを伴う処置など、お子さん自身が受動的な体験をされたときは、ぜひお子さん自身の力を信じて思いっきり遊ばせてあげることも大切な支援です。
②お子さんと一緒に体験を捉えなおす
お子さんの多くは処置をネガティブな体験として捉えたまま処置室を出ていくことがあります。このようなとき、なかなかお子さん自身の力だけでは自分のできていた部分を捉え、ポジティブな体験に捉えなおすことは難しいと感じます。そんな時は医療者がお子さんの様子をみて積極的に声をかけ、お子さんが頑張っていた部分を具体的に伝え、お子さんが「そうか、自分は頑張れていたのかな・・」と思って体験を捉えなおすことができるようなかかわりが大切だと思っています。体験の捉えなおしとして有効なのは、お子さんの処置を終えた結果だけに着目するのではなく、お子さんが痛みを伴う処置に向かうときの姿勢や勇気を讃え、できていたことを具体的に伝えることです。前述しましたが「泣く」ことは頑張れていないことではありません。また、「頑張れてたよ」「できてたよ」だけではお子さんの心にはなかなか届いてくれません。私がいつも声をかける一例として、「泣いたことは頑張れていないことではないんだよ。」ということを伝えたうえで、「今日、○○くんは注射の時、全然おてて(注射の部位)動かさずにできていたよ。とても上手にできていたよ。」「今日嫌な処置があるとわかっててここまで来てくれたことがまず、すごいことなんだよ。」など具体的にお子さんが勇気をだして処置に向かいあっている姿勢を讃える声掛けをするようにしています。また、前回の処置と比較してできていることがひとつでもあればそこを具体的に伝えるようにしています。処置後がっくり肩を落として下を向いてしくしく泣いていても、お子さんも実感できるような具体的な声掛けをしっかりとお子さんと目線を合わせ、お子さんの目を見て届けようとすると、徐々に下を向いていたお子さんたちは涙目で私の言葉を聞きながら、ウンウンとうなずいて聞いてくれて、顔をあげてくれることがあります。あぁ、私の声が届いてくれたと嬉しくなる瞬間です。こうして、「何もできなかった」と無力感を感じる体験として捉えていた内容を、「そうか、ぼく(わたし)できていたこともあったんだ」と感じてくれ、「とっても嫌だったけど、頑張ってよかったな」と少しでもお子さん自身が感じてくれているといいなと思いながらお子さんを見送っています。
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こどもが感じた体験から振り返ったエピソード
先日、予防接種を受けた幼児のお子さんでとても恐怖心が強く、処置室に入るのもやっとで、結局なかなかご本人の覚悟が決まらず半ば強引にBuzzy mini®(前回のブログでも説明した冷却と振動で注射の痛みを軽減するツール)は使用し、処置を終えた方がいらっしゃいました。お子さん自身はがっくりと肩を落として、私たちとも目も合わせずにしょんぼりと診察室から退室されました。私は処置のあと、すぐに声をかけに行き、上述のようにお子さんの処置でできていたことやここまで来てくれた勇気を讃えるように声をかけてみましたが、お子さん自身の中でその実感がわかないのか、しょんぼりとして落ち込んでいる様子でした。しかし、帰り際にお母様が私に「中井さんが話してくれた後、『ねぇ、なんで注射痛くなかったの?』と言ってましたよ。」と笑いながら教えてくださいました。私はてっきり恐怖と痛みで処置の内容をほとんど覚えていないだろうなと勝手に感じておりましたが、お子さんは注射の痛みが思ったほど強くなかったことをしっかり捉えてお母さんに尋ねてくれていました。私はBuzzy mini®を使用したことがお子さんの痛みを減らす認識をもち注射への恐怖を減らせるチャンスだ!!と思い、すかさずお子さんに「怖かったと思うけど○○さんが思っていた痛みほど痛くなかった?」と聞くとお子さんは「うん」とうなずいてくれました。私は「そうか、思ってたほど痛くないって感じられたのすごいね、あのはちさんのブルブル(Buzzy mini®)が効果あったんじゃない?次も、あのはちさん使ったら○○さんが思っている痛みほど痛くないかもしれないし、次も使ってみようか、今度もきっとうまくできるよ!」と話すと「うん」とうなずいてくれました。そしてようやく笑顔が戻り、ハイタッチして帰っていかれました。「あ、ぼく(わたし)あれを使えばつぎ、少し頑張れるのかも」と思って帰ってもらえたのかなと思います。お子さんと体験を振り返り、何が処置の中で自身のストレスを軽減するために効果的であったかを整理する大切な機会をもらえたエピソードでした。
③「褒める」ではなく「讃える」ことを意識してみる
最後に、お子さんへの声のかけ方について少しだけお話ししたいと思います。これは私がクリニックでお子さんと接するときに意識していることでもありますが、小児看護において、お子さんと医療者は対等であると考えています。
「褒める」と「讃える」は似たような意味合いを持ちますが、心理学者のアドラーによると人は「褒める」という行為は上からの評価的な行為であり、無意識に上下関係を生み出すと述べています。加えて私が経験上感じることは、「すごいね」「さすがだね」と伝えるだけではあまりお子さんの心には届いていないなと感じています。きっとお子さんたちは私たちが思うよりずっとよく大人の言葉を聞いていて、それが表面上の言葉であるかどうかも分かっているんだろうなと感じています。
それよりもお子さんが処置に向かうまでの過程で自身の努力が認められる声掛けやお子さんの処置に向かう姿勢をお子さんの具体的な行動と一緒に讃えることで、お子さんの表情は自信に満ちたものになるように感じています。「注射ってわかっていても勇気を出してクリニックに来てくれたことはすごいことなんだよ」「この前の注射では、お部屋に入るの嫌って言ってたけど、今日は頑張ろうと思って自分で入ってきてくれたんだね」とお子さん自身も実感できるような具体的な行動でお子さんの努力や勇気を認め、お子さん自身が自分の困難を自分の力で乗り越えたと感じてもらうことがお子さんのこれからの体験にとても大切だと感じています。
さて、今回で「クリニックで痛みを伴う処置を行う際の看護」3回シリーズが終わりました。
今回もブログを最後まで読んでいただきありがとうございました。
京都もだんだんと暑さが増してきました。
皆様もどうぞ季節の変わり目、お身体ご自愛ください。